【巧巳】「ふ…ふふふ…」
【鈴】「あ…あの先輩…」
【巧巳】「あああああっ! ムカつくぞ! そことそことそこぉ! あとそっちの木の上ぇ!」
【巧巳】「ふわふわ浮いてるくせにジロジロこっち見んなぁーー!」
【鈴】「せ、先輩、落ち着いてください」
【鈴】「みんな…その…まだ悪いことをしていない悲しい人達です」
【巧巳】「“人”だった奴らだぁー!」

 そう…生き返った俺の目には、一般的に『幽霊』と呼ばれる物が見えるようになっていた…。
 隆臣さん曰く、幽体の時に霊力の強い鈴ちゃんや隆臣さんのそばに長く居たからだろう、とのこと。
 鈴ちゃんの除霊を手伝ってるウチに、その力がこっちにも染みて移ったという仮説だ。

【巧巳】「あー…、ヒフミ神歌だったか、あの変な歌、歌って良い?」
【鈴】「だ、ダメです。まずはお話を聞いて、それから逝くべき道を正してあげなくてはいけません」
【巧巳】「…けどなぁ…」

 ギロリと何もないはず空間をにらむ。
 半透明のオッサンが恨めしそうにこっちを見つめている。

【巧巳】「…気分わりぃな…」
【鈴】「じ…じきに…慣れると思いますから…」
【巧巳】「…鈴ちゃんは慣れてるんだなぁ…」
【鈴】「わ…私は…物心がついたときから…見えていましたから…」
【巧巳】「はぁ…見えて当然て人生送ってきてるんだな…」
【巧巳】「良いことなんだか悪いことなんだか…」
【鈴】「すみません…」
【巧巳】「いや、生まれつきの物だから別に鈴ちゃんが謝ることじゃ…」
【鈴】「いえ…先輩の…ことです…」
【巧巳】「え? 俺?」
【鈴】「先輩が幽体の時に…私の除霊を手伝わせたりしなければ…」
【巧巳】「ああ、鈴ちゃん。それならなおのこと謝ることじゃないぜ?」
【鈴】「でも…」
【巧巳】「手伝うって言ったのは俺だし、鈴ちゃんのそばに居たかったのも俺だ」
【巧巳】「あぁ…まぁそう考えると今のこの状態はなるべくしてなったってことか…」

 そこら辺に浮かんでいる幽霊達を眺めながら、ポツリとつぶやく。

【巧巳】「ま、鈴ちゃんに近い存在になったって考えてればOKか」
【鈴】「先輩…」
【巧巳】「でも…まぁあれだな…一番いただけないのは…」
【巧巳】「二人っきりでいるはずなのに、全然二人っきりな気になれないてとこか…」
【鈴】「それは…仕方ないです」
【巧巳】「まぁ仕方ないよな…」
【巧巳】「二人っきりになる為なんて理由で除霊なんて間違ってるしなぁ…」
【鈴】「はい。幽霊さん達とは…まずお話から始めるのが一番です」
【巧巳】「………」
【巧巳】「なぁ…鈴ちゃん…てことは、だぜ?」
【鈴】「…はい?」
【巧巳】「俺たちがキスしてるとことかって…みんな幽霊に見られちゃってたりするわけか?」
【鈴】「えっと…その…」
【鈴】「………」

 笑ってごかまそうとしている…。
 見られているんだ…。

【巧巳】「──!! ってことはっ!!」
−ひふみよいむなやこと〜−